55/699
金魚掬い
私は戻ることにする。
あの日からどれぐらいの月日が流れたのかは、戻るために、私は敢えて考えない。
ひとつだけ分かっていたのは、彼がずっと同じ場所にいるのだということ。
「帰れよ罪悪感」
*
私は戻ることにする。
あの日からどれぐらい年月の経過があったのかは、戻るために、私は敢えて考えない。
彼がずっと同じ場所にいるのだけは分かっていて、私はそのことを思い出すと怖くて、でも思い出す、これから先だって思い出すだろう、けっきょく戻るほうがましにも思えてくる。
「みてくれこれ首輪がこんなにボロボロに。さ、はやいとこ証明してくれよな」
*
また戻ろうとしている、腰が曲がっている私。
そもそもじぶんがもはや一体どこを目指して歩いているのかも、はっきりとは分かっていない。それでも私がやろうとしていることは正しい。
今年も冬はやって来ていて、私がいくら冷たい人間だとはいっても、さすがに彼も今回のことで認めるしかなくなる。
これまでの人生、私が彼のことをおもわなかった日はなかったのだ、と。




