深海生物
自動的に次々と増えていく僕。だから僕はアパートにひきこもり続けていても随分肩身の狭い思いをしている。そうこうしている内にも彼らが流布し続けていた。もはや、単に注意をしただけの最初の僕は遠い。本当に遠い。僕じしんがそんな僕に会うにも一苦労してるぐらいなのだ。泣きながらラインし、気分はまるで新海誠の映画でよく見る自意識が肥大したキャラのそれ。僕は深海生物だ、コンビニエンスストアとアパートを行き来する深海の生き物だ。深海生物は帰り道どんぐりを拾う。何もかもどんぐりの背比べだから。どんぐりと一緒にいたい、デマが広がり、どんぐりに見守られながら、首を吊り、失敗するんだ。そうして新たにまた話題をご提供、町の大人たちは冷ややかな目をして声だけは柔和に朝の挨拶。そんなごみ出しの朝僕はずっと下を向いている、いや一生そう。誰かがひたすら坂道を転がっていく僕に注意するんだ、僕はそんなふうに思わないけど。当の僕としては一つ所にちゃんといるからだ、確かな心持ちで。
それなのにちゃんと転がっていて、どうやらちゃんと転がり続けていて、僕はどんぐりとずっとふたりきりでいて、気づくタイミングはあったのにあえて意識をそっちに向けないでいて、だから気がつかないままでいた、だから最後の時がちゃんとやって来た、しっかり真っ逆さまに崖から落ちている僕の出番が、今来たね?




