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きみの空っぽの頭が叩かれてる時の景気のいいあの音、あれをもう一度だけでいいから聞きたい、彼女はそのためだけにきみの兄さんが落ちた地獄までいってしまえるみたい。俺は行けるところまで車で送っただけ。来なくていい、独りで逝く、というと歩いて逝ってしまった彼女。車で待ってて、私が戻ると信じてるみたいにここから動かずにいて、ともいわず。
ああきっと彼の足にぶら下がってる靴を彼女は優しく脱がすだろう、利き腕と同じで右足のほうの彼のコンバースを。
そしてきっとなるべくそこから上に目をやらないようにしながら彼女は泣いてるだろう、聞こえているだけでももう充分なはずだから。刑罰を受けているきみの兄さんがどんなかを見ないよう、彼女は努める。
いつになるかわからないけど彼女は帰ってくるよ、全然信じられないままで構わない。だけど、俺ときみだけは彼女を待ってなくっちゃ駄目なんだ。




