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量産型
走って、おとなになって。知って、子供でいられるのは森の奥ふかくの光が届かない場所でだけだって。そこで見つけた美しい花が咲いてた場所、荒らした誰かのことずっと学級会のさい犯人さがしして吊るし上げてやりたくってたまんなかった、そんな気持ちならよくわかるけれど当分がまんして。走り続けて。宝箱開ける暇もないって、先へ先へ急いで振り返らずにいて。ハートに刺さった矢も抜かないで走ってそして思いしって、いつか見たあの惨劇と残された靴跡は未来のじぶんたちのものでしかないんだって。涙すらじぶんのものだとはとうていいえないし、それでもいいっていうしかなくて、こんな量産型の痛みしか抱えていけないものなんだって諦めておとなになりながら走って。ひたすら暗いあの森をちゃんと、出て。




