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サン
俺たちは知っている。明日死ぬかもしれない身というフレーズを見聞きする時、それは決して、病魔に冒された人やとても危険な仕事に従事する人に限った話ではないということを。そのことを考える時はいつも、恋人、家族、友人に、何を残してあげられるじぶんなのかと揺らぐ。勝ち目などなく、不安しかない。俺たちは知っている。明日死ぬかも、などとは思いもよらず、突然消えていった幾人かのことを思い出す。フィクションの世界であろうとここ日本の現代であろうと、突然に、思いがけず選ばれてしまった、他の誰かがそれに選ばれてしまう現場を目にした瞬間さえあったというのに、じぶんに限ってはそんなケースに陥ることはないと思いこんでいたかのように、覚悟は微塵もできていなかった。あの何も残せなかった人たち。まだ十代で事故死した小学校時代の遊び仲間。
俺は知ってる、俺は思い出せる、だけど。
明日もまた仕事だ。




