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唾を吐いても
英米のミュージックビデオではよく、女の子たちは空を向いていた。
空に向かって思いっきり両手を上げたり、車から顔を出していたり。
気持ち良さげに目を閉じ、スマイル。
ここにいることについて彼女たちにはちゃんと可能性も感じられているのだ。
私はまったくの逆。
私はこの世界を見上げたいの、世界に唾を吐いてもじぶんに向かって落ちてくるだけ。
例えば、喫煙者たちがせめて肺を病んで苦しみながら死ぬ気満々でいるんならいいけど、そうじゃないんだからあいつらは。
だから私は出ていく。ひとり歩いていく。
みんな同じ空の下、なんて歌われたって悲しい気分になるだけ。笑えやしないんだ。
この世界のことを、ずっとずっと昔していたように私は見上げたい。どうせならこの世界をいつも、ずっとずっと私は見上げていたかった。
同じところにある痛みにも似たこの正解が、きつい。
私ひとりだけいつもびしょ濡れになるなら、むしろここにいることのほうが不自然だ、なんて。




