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グロウ






 夕食をたいらげたあと、少年が皿をなめているあいだに彼の家族はひとりのこらず姿をけしていた。

 少年は両手にもっていた皿をおいた。ゆっくりと時間をかけて食事にとりかかった少年は、とちゅうじゃまと感じるすべてに歯をむきだしにしたりひじをつきだしたりしつつ食べおえた。いま疑問に思うことをその白い皿がこたえてくれる、そんな可能性だって信じられる男の子であるかのように、椅子のうえでうごかずじっとしている。少年は思っていた、何がわからないと思っているのかわからない、と。この場合にはだから質問をしなくちゃ皿のほうでもこたえられるこたえがいえない、明白なのはそこで、だからこうして熱心に皿をみつめていても何ひとつ可能性がないまま、ということになる、と結論をそこにのっけることはできているので、それはちゃんと皿だった、ということはできるだろう、ここにいまちゃんとある白い皿だと。そうしてそれはとてもいい皿なのだった、ここにない皿ならばどれだけ悪いのかは想像でしかはかれないし、想像をこえている場合も考えられるわけだから本当にここにあるものでないいじょうは最悪だとしか少年には思えない。どれもこれも。

 そのとき音がした、はじめの一步だった。涙だ、皿のうえにおとしたその涙はじぶんのおかしたあやまちであるときづいた少年は、すぐさま事実を目にはいらないようにしなくてはいけないと感じて、そう努める。

 いまや彼ひとりだけがとりのこされているこの奇妙なスペース、もう二度とだれも帰ってはこない家のなか、もぬけの殻であるこの場所で。














 



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