あたしのこと
あたしのこの小指がいつかどこかで指切りをするんだとする。
その小指を粉砕するのまでが、あたしの物語なの、そこまであたしには見えている。
その誰かさんがノーマルな指切りを、ノーマルな指切りなんてこの世にあるんだかどうかも疑わしいけど、何だかそんなようなものを相手が望むんだとしてもそれはもちろん責められるべきじゃない。
とはいえ、あたしはあたしのやりたいようにやる。
これまでの日々で鍛え続けてきたこの小指はその小指を離さないだけのパワフルな小指、物静かで、綺麗で、儚さすら漂うそこらへんの少女の小指と同じだと、どうして根拠もなく考えていたのだろうかと永遠の指切りが起こっているのを眺めおろしながらその人は考えることになる。
一方のあたしはにこりともせずにいる。
こっちからは絶対に離さないでいる。
それは指切りとして始まった、なのに、なぜ? そう訊かれても答えなんかあげない。
あたしはただ見せてあげたい、ここにいる本当のあたしを、どちらかが息絶えるまでこれは続くってことを、嘘が本当になり本当はやがて嘘になる、その何もかもを。やめてくれ、こんな事態は望んでいなかったといわれたとしても。ひょっとしたらどこかの時点で、あたし自身からもそういわれることさえあるんだとしても。
世界に、見せてやらなきゃあたしは気がすまない。




