予告編
吐き捨てたガム拾い上げ当たり前のことみたいにポケットの中に。
こんな、ひどい場所から、彼のかんでいたガムを救助対象でもあるかのように、ともかくわたしは早足で、後ろも振り向かないで、持ち出すことに成功したのだった。
ここからもっと遠いもっといい場所まで、行ってわたしは、わたしが親しみを感じられる辺り、土の上に立ち、それから、わたしは一度だけまじまじと手の中のそれを眺める、それが返事することはない、だからわたしは埋める、するとやがて、花が、同じ場所に、そこに一輪の花が、もし咲いてくれるようなら踏み潰されるのなんて耐えられない、とわたしは思う、そこにわたしの家を建てるべきだ、とわたしは思う、そうなったらわたしは独りきりでずっとそこに住むべきだ、とわたしは思う、そうよ、わたしはこれを守りとおしたのよ、とこのことだけを、自分にいえさえすればそれでもう彼女は満足なのだ、だってその時には彼女は体と心のどちらからも若さというものは失くしているから。
いま、大きく息を吐き、やっと目を開け、そしてまだ若いわたしだから、思うこと。
この世のどこにも行きたい場所を持たない彼女を、せめて、誰にも渡しちゃだめ。




