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煙のように
おれが予告なしにある日ふらっと消えたとして、だれも探し出せることはできないのじゃないかと考えたのは小学校の頃の夏休みだった、だれもおれを知らないからだ。
それは今に至っても変わらずにそう、おれが好きな場所、好きな食べ物も好きな音楽アルバムも香りも映画も、だれも一つも知らない。そもそもそれらをおれじしん知らない以上は、だれも知れないまま。だから、おれはいつでも消えれた。
何も好きになれないから置き手紙も置けずにいるんだずっと。
そもそも、どこまでも軽い存在であるのに、どうして火のつかない都市生活なんて続けるんだろうか、じぶんでもさっぱりだ。
こんな煙にも負けてるおれを、だれか、吹き散らして。




