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別のドア
ベッドの中にいるあなたの首を締める。
もちろん、途中でそれがあなたではなく別の男だと気がついていた。だが力を緩めることはできなかった。間違いだからこそ、僕にもやれた、ずっと上に乗っかって、しっかりと人間の首を締め続けて。あなたが相手ではないと分かったからこそ、最後まであなたを殺すそれをやれたんだという見方ができてしまう。
彼に、愛していますといえたらいいのに。あるいは愛せなくてごめんって。または明日は晴れてピクニック日和ですよって。または海苔弁で好きな瞬間は何ですかって。
でもヒッヒィーイィ、僕の口から出るのなんてそれぐらい。僕の過失は、後ろからあなたに抱きしめられながら、あなたの首を締め続けた僕であり、いいかげんに閉めたドアと、しまらない涙と、その日をただ汚してしまったこと、そんな今ここにある過失。
あなたは何時間も僕を揺さぶりながら耳元で囁き続ける、どうしよう、と。
「本当にお前のこと愛してる、どうしたらいいんだろうここから。なぁ? どうしような?」




