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落書き






 正しい行いをせよ。そう教えられた。だからそうした。誰に対しても平等に接した。男子にも女子にも話しかけた。嫌われた。話しかけられなくなった。距離ができた。その距離を埋めたかった。できなかった。そのままずるずるいってしまった。どうしたらいいか分からなかった。手を机の下にやった。正しいことは全部正しいと信じたかった。雨が降った。傘を誰かに盗まれた。部屋に水溜まりができた。邪魔だった。秘密など持たなかった。ドアにぶつかった。指差す指を見た。廊下を走った。とにかく走った。階段に腰を下ろした。涙は枯れたらしかった。汗と血が流れていった。それが青春だった。どうだってよかった。じぶん以外の誰かが名付けたようなことなんて心からどうだってよかった。走って逃げた。じぶんから逃げた。どんどん降らせた。もっと降らせたかった。ファミリーレストランに家族はいなかった。いつもいなかった。繰返した。嫌じゃなかった。塗れた。歌を調べては握り潰した。分かっていると思っていたこともぜんぜん分かっていなかった。していたのは食事ではなかった。していたのは睡眠ではなかった。していたのは参加者の表情ではなかった。いつかは帰れるつもりだった。冬の中にいたつもりだった。先に期待するほうがどうかしていた。どこかに行けば少なくともそこに行っていたことになった。いえといわれた。いわなかった。あたたかい記憶を押しやった。舞台裏で吐いた。光らせたくなくなった。いつも軽い実がそこにあった。裏返した。落書きした。でもそれだけがそうだった。未来だった。
















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