さまよえる魂
僕たちはなかったことにされる。寒さでそのうち死ぬに違いないからと、僕たちは、とどめの一撃を刺されることはなく、だからその晩、彼らからなかったことにされたことを、なかったことにされ続けることだけを、これからは考えて生きてゆかねばならないと、暗闇のなかを歩き続けながら考えてもいた、これから夜になるたびにどういう思いが胸にわいてくるのかが、何人かには見えてもいた。
つまりはやっぱりその晩、死ぬ覚悟なんかまったくできていなかった僕たちだった。
たまたまの、一晩限りの延命なんだとも、とてもじゃないが考えられるわけもない、怖い。
死ぬのも続くのも怖くてたまらなくて、これからはたったひとつ、このことだけを考えて生きていなくてはならない、余所見はなし、だって本当に死にたくないから、と僕らは思う、そして思ったことを何人かが声に出し何度も何度も何度も何度もいっていたら、そのうち、だって死にたくない、と呟きながら手頃な石を一人が探し始めた、死にたくない、死にたくないよ、という声がこの真夜中を、白い森の中を満たしていった。
そうして僕たちは数を減らした。




