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星に願えば
願い事は、一つだけ。三回それを唱える。この汚い街の夜空を見上げていて、何かが光ったようなら、そんな気がしたんなら、いつも考えているみたいに今回だってどうせじぶんの気のせいだろうだからなんて考えず、ちゃんと願いを唱えるんだ。
人生最速をそこでかます、願いをすばやく三回唱える、ちゃんと決めきれていない願い事だとしても、決めてしまった願いを心の中で唱える。
声には出さない、いつだってそうだけれど。ひとに聞かれてまずいようなことは、おかしな家で育ったんだから、咄嗟にでも口には出さない。出せない。
だけど僕らは知っているんだ、頭の中だけは自由であっていいって。
そして、いつも叶う願い事は一つだけ。
一つだけにしぼるのは確かにむつかしい。でも叶う願い事が一つあるということ自体、とてつもない希望だ。その輝きがどれだけ人生において長く続くものなのかは薄らともう気づいているのでしょう、だから下を向かないでいて。
僕らはいつも流弾に願い事をする。
変らない願いが叶うときを、床に倒れ死んだふりをしながら待っている。




