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君って
死んで。たった一つ、僕に望むのはそれだけだとその乾いた唇は語った。君にそんなふうにいわれて、死んでみるか、とはならない、それがオレじしんとしてもすごく悲しい。そう答えつつ僕は内心、じぶんはどこまで間抜けな男になれるんだろうと、そう思っていた。
もう死んでよお願いだから。今すぐ死んで。ここは嫌だ死んで、死んで。死んでくんないともう何も許せなくなるから、だから。
君の片方の腕はずっと僕に摑まれ、反対の手は君じしんの顔を隠してて、君の声だけが僕に届く、君が隠しているものが何なのか判らないままに。この手を離したなら、君はどうなるのか。君はどこに行くんだろう。君は戻ってきてくれるの? 君は、君って、本当はどこの誰なんだろう。
もう終わりみたいだ。




