410/618
だけど走らせたかった純情
あなたと話したいことが本当にたくさんあったんだよ、もうそれらはどれも消えてなくなってしまった。僕らは失われてしまった。もうどこにもない。僕らが在った証拠すら残らなかった。
どこにもいない僕らをどうして記憶し続けるのか?
それは、あなたがいてほしいと願った僕のため。
そんな僕なんて、現実には最初からずっといない、逆さまの世界にだって存在しえない僕だったとしても。
眩しい夕陽だけに涙を使うと同時に、夕陽だけが涙を隠す。生きてる限り本当のじぶんの泣き方なんてもんは隠し続ける、平凡な眼差しの裏に。




