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本物の愛
この世界は静寂の世界とはほど遠い騒がしい場所。せめて森の奥に本当のじぶんを閉じ込めておく。偽物の世界をぼくの両手は作り上げていく。
どの部屋に泊まる時にも枕は絶対に持っていかない、じぶんの枕もむしろ嫌い。
僕の母親は枕で殺されたんだ。
世間ではそれは、狂った愛って話になっている。もちろん僕の目にはたんたる殺人。愚かな人々がするような。
父親は刑務所に入ると早々に自殺したと聞いた。
僕の嘘だけが本物の愛。早く死んで早く慣れたい。
小さな町の伝説になるために、僕は生まれた。




