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暗い冬の愛






 冷たい愛しかじぶんには要らない、冷たい知性しか信じるのに十分ではないと彼女は公言している。

 他者との関係において、それが冷めていく速度、音階にかんしても彼女には思うところがあったし、何より母親の影響を自覚しているからこそ常に、ここははっきりとさせておかなくてはならない点であったからだ。



 一般的に見て彼女の母親は愛情深い女性だったのかもしれないが、いき過ぎたものだった。それ自身が沸騰しているせいで曇った目でしか見られなかったとでもいうのか、やり過ぎた。



 その愛が、彼女の顔に火傷を負わせた。

 彼女の右半身にも。

 外界との関わりを持とうとする時にどうしても必要になる心の一部分にも、深い火傷の痕を残していた。



 それはもはや攻撃だった、その愛が彼女にいつまでも消えない痕を残し、だから二度目はない、ということ。彼女は自身に、何のために耐えるのか教えないようなもののためには耐えたりしなくていいと、今はちゃんと選択肢を与えるのを忘れないようにしている。些か支払ったものが大き過ぎるとしても、彼女は学んだ。

 この世界の全てが暗い冬に変わってしまったとしても、それを嘆くだけの母親のような人々とは絶対に、一緒にいないようにする、と。



 いつの日にか彼女たちが死んでしまい、報せを受け取るとして、見せかけだけであっても悲しみに暮れたりすることも彼女はしない。

 にっこりする。
















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