連休明け
朝の光と電車の中で目をつぶっている。
やがて揺れがきた、ぎゅっと吊革に強くつかまる。オレは、オレも、自問自答を繰返す。
繰返すといえば、連休明けに電車に乗っていて、聴こえてくる曲を一つ持っている。
ある状況にいると、頭の中でそれがループすることがある 。鬼束ちひろ。誰にも似てないとは思うが、特に彼女が書いた曲の感じを好きだとか思ったことはなかった。
それでもやっぱり、シャツに汚れがつくのと同じに回避困難な歌もあるっていうのは知ってる。
えんえんと脳内で再生を試みる。歌いだしは、まあ正しく再現できてると思う。問題はサビからだ。
水の中に行ったみたいに、彼女の声が淀む。
いつも上手に思い出せない。
「あなたの、うっでぇはぁんこへんはぁんねあああっあ」
やり直し。
「あなたの、うでぇぇんはんのぇんはっはんせんなははっん、もこもぉぉ」
もういちど、やり直し。
「あなたの、う、でぇぇがぁこぉへんっがせーなかぁんがぁこほっひはってへん」
これだ。
でも後はもう全然だ、いつかちゃんとこの曲の歌詞を最後まで知ろうとも思わない。そういうもんだ。
いつかどこかで聴いたふるい歌、歌の半分を、休み明けにひとり頭の中だけで再生し聴く。
九月一日。
そしてまたオレはやってる。目をつぶって、何も考えない、何も見ない。
いつの間にか降りないといけない駅に着いてて、はっとかいって、慌てて移動、ということをまたオレはやってる。
オレはまたやってる。
回避不可能なものを、どういうわけか、回避しようという動き。なんにも考えてないってのじゃない、たぶん癖ってやつ。どうしようもないものはどうしようもないと、オレだって分かってはいるんだから。




