報いを受けた彼女は
「子どもだった頃から読書してばかりだった、大人のために書かれた本も早くから読んでたし。私たぶん読書時間をとり過ぎたその報いを受けてる」
そうして彼女がいうには、じぶんは世間で扱われているのと同じような恋はできないということ。二次元三次元、美醜、吊橋的なものにも左右されることはない、彼女の石のハート。
告白を済ませた彼女は生き生きとしている、いつになく、彼にはそうとしか思えない。
晴れた日の街の片隅にある店の、たっぷりと日差しが入る席に座り、彼らはあまりにも分かり合えなかった。
「おいしいコーヒーだね」
彼女は店員が通路を通りがかったので、手を上げて立ち止まらせる。メニューを指差し、何か追加注文をとる。
彼は見つめる、この日の彼女の輝きを。
過去、ネイル、笑い顔、声、カップを持ち上げる仕種。一つ一つが、彼女を輝かせる、今や全てがなんの意味もない、今日の街、ただ街にただちに吸収されていくだけの美しい部品としての輝きだった。
そんな美しさに対して、彼は一つの言葉しか持たない、何もかも始めから、出会いから無意味だったんだとしか考えられない。




