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閾値
姉には天才的なセンスがある。
あらゆるものを彼女は破壊した、家のなかにいても町を歩いているだけでも、姉の存在によって何かしらが損壊し倒壊する。幼少の頃から町の有名人であるぼくの姉。何をしていても、してなくても。
両親も早死にするに違いない。
本当に急速に老いていく両親だから。
それで、ぼくは?
ぼくはとっくに壊れていた、ぼくの人生はぼくの家のように、ぼくの家が燃えるのよりも燃え上がって、ぼくの心にかんしてはそんな赤に染まるよりも前からいつの時点からか、もう手遅れだった。
姉がいつも側にいて、その手で滅茶苦茶にしてくれなきゃだめになってしまっていたから。




