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ギター
そのギタリストが悪魔と契約を結んだのは明々白々だった。どこのステージでも長袖にフードで、照明が当たる中でも存在の大部分を失くしているように見え、片方の肩と腕だけしか動いていない。
最近から入ったファンからしたらどうでも良いこと、もしくは羨望の目を向ける場合さえあった。ギターを支え動かすだけのパーツがギタリストには残っており、作詞作曲をこなす彼は以前と何ら変わらずに曲として人生を表現し続けているのだから。悪魔憑きのリードギターは舞台の上に立ち続けているのだし、バンドメンバーだって彼に合わせているのだがら。ライブハウスに行きさえすれば、これ以上はないかたちで音楽があるのだから。




