内通者の従弟
彼は、内通者の従弟として、入学前からすでに存在を認識されていた。学園内では常に内通者の従弟としてありつづけた、ごく当たり前のこととして。さらに悪いことに、当の彼が黙ってそこでそうあろうとしていた数年間。
しばしば現在の彼は、かつて内通者の従弟という汚名をかぶって学生時代を通過したこの男は、がむしゃらに朝食を作る日がある。
時刻はだいたい三時をすこしまわった頃。今現在、彼は、孤独だが煩わしいものすべてを排除し暮らしているのだが、時おり、まだ夜が明けてもいない時間帯に、それでも完全に目が覚めてしまうことがある。
ため息はなく、強張りなどもない。淡々と、次から次へと、テーブルに手料理を載せた皿を、男は音もなく置いていく。
夜明け前から電気を点け、活動するということが避けがたく起きる日の苦しさ。待ち人きたらずの体のテーブル。彼は流し台のところからじっと動かず、ひとしきり眺めている。
それからほぼ機械的に身仕度を済ませ、手つかずの料理を捨て、コップ二杯ぶんのミネラルウォーターを体に入れると、あとはもう、その日の朝もいつもと同じように、外の世界へ彼は歩いて出ていく。




