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死者と生者
しんだひとは、どこへいくのときかれて、だれかはしつもんのこたえになることをいった。空にいくんだよと。空のうえにずっといるよと、だれかはいいつづけた。しんだひとは、みんなそうなるんだと。空のてっぺんよりも、たかいたかいところへ。そのたかさをしめすように、空たかく、ほんとうにたかく、とだれかはくりかえした。そして、ひがおちて空がくらくなるころになるとひかりだすもの、それは星で、死者は星のかがやきとなり、ちじょうにいてもわずかにみえるものなんだと、だれかはいった。とおくはなれていても、とどくんだとだれかはいった。しんだひとのことをだからこっちにいてもみんなわすれないでいる、おもいだすということをする。うまくねむることができないときには、へやにいないで、空をみあげるということをする。あそこにひかるたくさんの星たちをみあげる。そうしたら、ねむるんだよ。めをとじて、ねむるんだよ。めをとじて、ねむるために。しぬためじゃなく。生者にだってたまにめをとじることはあるもんだから。




