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働き者の彼女






 信号待ちの時に会話のない二人、という、少し気まずかったりそうでもなかったりもするシチュエーション。

 あれに、思えば随分長いこと縁がないじぶんを、今自覚する。



 じぶんの手を明るくて静かな今日の空の下で、ちゃんと見下ろしてみる。

 ひび割れだらけ、赤切れだらけ。

 治りかけの箇所は白く粉っぽくなっている。



 そう、彼女はずっと働き続けてきた。

 働いて、働いて働いて働いて働いて働いて、働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて、他の女子なら休むような時にでも働いて、働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて、働いて働いて働いて、働いて、働いて、働き続けて今日がある。

 けれども、その果てに得たものは何か? 考えてみれば、身体の一部分を行使しているというよりかは、道具のように意識し、気を遣いつつ動かしている近頃だった。



 洗濯物も、不注意で汚さないようにしているのだった。手を使っていていつ、割れたところから血が出ているか彼女には分からないから。

 恐る恐る荷物を手に持ったりする、躊躇いがある、この傷ついた、汚い、休むことを知らないでいる手。



 手は、何かを示していた。

 一体これは、何のためにあるのか?

 誰のためにこれはあるのか?



 今あることが全て、と彼女は思いたい。何はともあれ、今この時があるのは最善であると。

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