調べられながら
あまりにも長い時間調べられている。何をどこまで調べる必要があるのかが一向に見えてこない。
そればかりか、見れば見るほど見えてこなくなるような相手によって、オレは調べられている。
こちらより権力を有した者であることだけは確かだ。それは忘れていない。
ここに連れて来られる前、彼が何をしなければいけないのか説明を簡単に受けはしたし、じぶんの足でこの部屋まで歩いて来たのも確かだ。だけど、完全にじぶん自身の意思で来たかと考えればそうでもないようにオレは思う。
彼とオレはずっと一対一でこれを続けている。浅いところと深いところがあり、柔らかさと硬さがあり、熱くなる部分と冷たいままの部分があった。
そのさなかにも、隣室では同じ女性が度々叫び声を上げているのが聞こえていた。
オレはオレのことを調べ上げているんだと思っている相手に空腹を訴えた。
この部屋に唯一たくさんあったのは水だ。
これをオレは奇妙なレース競技のように感じる。ある動きのためにオレの空腹はオレの首を完璧に固定するのだ。
こういうことがあるのがオレとしては本当に分からない。全部が目の前の男のものみたいだから。もちろん錯覚だろうが。
彼は何も見せなかった。オレは見せた。
オレは見せながら、至近距離から見下ろす彼の心の動きを追いたかった。そんなことができるなら誰も苦労はしない。
オレは机に手をつくようにいわれ、後ろを向くようにいわれる。
もしかしたら彼は何もいっていないかもしれない。
長いことそうだったとしたら。そう思うとゾッとする。
オレは腕で顔を覆い隠す。
隣からあれが聞こえなくなったら、そうオレは思う。ちゃんと考えよう。




