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座礁






 短い眠りを眠って、もう起きていようと決めた彼はしかしベッドを離れず、カーテンを開けず、身を起こしてすらいない。見ることが怖い。彼は、見る前からもう見たら見たこととして、自身の意識が確定させるというそれ自体が怖い。

 シーツから手だけを彼は出した。

 手のことを彼は考えた。

 誰かは繋いでくれると、昔はそう考えるのも容易だった。世間では当たり前の光景だったし、それに第一他に何の使い途があるのかと考えても今も分からないのだった。彼は愛し合う両親と、早くに夫をなくした祖母に可愛がられながら育った。欠陥があるとすれば、だからじぶんだ。家族からも学校からも影響されないでいる、彼らの存在が及ばない深くに何かあるというのだけは、これが示している、と彼は感覚としてつかんでいた。彼女たちから見てどういう男子であれば無難に思われるだろうかと、いつの頃からか無意識ではあるにしろ優先させたのはそこばかりだった彼。


 嫌な子供、と彼は一人呟き、つまり彼はこういうふうにしか二十歳の誕生日を過ごせなくなってしまっている人。

 今彼の元には、おおきななみが来ている。じぶんを溺れさせるのなんて実は簡単なことだったからだ。こういう座礁なんて。人一人なんて。









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