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滅びの風
「過剰な好奇心は身を滅ぼす、だったら一切もう、何もやりたくなんかないな」
相手の側にも何もしてほしくない、と彼。
本当に? と僕。
本当に、と彼。
後になっても彼に何回か水を向けたが同じことをいい続けた。むしろ、何もできはしない老人みたいな十年愛でいいんだと、あの夜彼は店でいった。
嫌になるくらい僕らはいつも無風地帯。
あの時、彼の心持ちは大体分かっていたので意見を差し挟むことは控えたのだったけれど、今僕は思う、絶対そんなのはごめんだと。
好奇心は身を滅ぼす、滅んだらいい、と。




