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幸運の壺






 その日のおれは友だちの家にある幸運の壺を擦りに行った、だけど想像してたのとはまるで違っていた。

 おれはこの手で触れた、だけど違った、実際のところこの手で擦ったものは、前から思っていたものとは全然別のものだった、触り方も大分違っていた。おれは想像したことがなかった、じぶんがあんなふうに触るだなんて。あの日、おれは友だちの家に行った、幸運の壺がそこにあるとそう聞いたから。それでいっぺん触っておくのもいいかもしれないと思ったから。

 だけど、そこで起こったのは、おれが想像もしていなかったことだった。それからそこにあったものも。もっというなら、それによって照射されるものも。

 あの日、あすこであったことは、あったものは、要するに幸運の壺とは対極の位置にある、幸不幸の区別はつけられなかったし、つけるべきでもあれはないもの。








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