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個人的な感情と常識
そこら辺に落ちてる常識を彼は拾いあげて、そいつを検分しだした。
一体あの男は何をやっているとじぶんでは認識しているんだろうと、離れた場所からオレはしばらく観察し考えを巡らせていただけだった。でもようやく思い至る。
オレがそれをいったんだ。
ずっと前に、オレがいったことを彼が忘れてはおらず、しかも選択肢にさえ入れていたんだということに気づいて、オレはそれを望まない、かつて望んだふうには望んでいたりはしない今のオレがいて、手を伸ばす、とっくに手遅れの涙が流れだしていても。




