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道行き
一人のばかにでかいリュックを背負った小柄な女の子の後ろを駅を出てからずっと歩き続けているかっこうに偶然とはいえなってしまっていてすごく申し訳なく思い歩行スピードを緩めつつ気まずい感じもありつつでも晴れた空の下を歩いてることが些細なこんな時間がいつもと違うもののように感じられてこのような感じ方をじぶんができてることそれ自体がちょっと嬉しい、という時みたいに、今日僕は知らない街に行くことを考えている。
出ていく。
親兄弟を捨てて。職場に迷惑をかけることも顧みず。
ふらりと。身軽に。
後先なんかも考えず。
新しいじぶん。
いちから再スタート。
そこまで考えたところで、僕は見下ろす。僕は、小学生になってすぐ無理やりに入れさせられた少年野球のチームにいた時のように、僕じしんを見下ろす。
ここに躰を持ってあること。じぶんの影を見下ろし、それはつまり心があるということ。
僕は誤りたくない、だってこの謝りたくない性格は筋金入りだったから。




