半信半疑
いつ帰ってくるのか、どうやって帰ってくるのかも分からない人、ほんとうに帰ってくるのかそれとも二度と帰らないのかも分からない、その人を待つ理由、ここで待ち続ける理由など冷静に物を考えるということができる人間であれば一つとしてないことくらい理解できるに違いない、ただ帰ってくるとしたらここで、でももちろんあらゆる可能性を考える、ここ以外のどこか他の場所の可能性もなくはないと考える、ここに帰ってくるまでの途中地点で力尽きていることも考える、倒れたその躰を抱き起こして連れ帰ってしまうその二つの腕の可能性も考える、考えたくはない、危険なまでに軽くなったその躰が運ばれる先は粗末な住処、かいがいしく世話をされ回復していく、その目がようやく開く、ずっと開いているようになる、声が出るようにもなる、笑うようにもなる、心から安心して眠りに落ちる、でも依然として悪夢にうなされる、すると手に手が置かれる、眠る者の手は支えを必要としその手にすがる、眠る者と眠らないで側にいる者の触れ合いは偶発性によるもの、だとしてもときに愛が生まれてはならないところに愛が生まれていく、という可能性を考える、ここで考える、考えたくはない、ここでずっと帰りを待ちたくもない、だが結局何一つ終わりはしない、ここで帰りを待つ以外、選択肢はないから。




