266/618
何かの歌詞みたい
「人間になっておくからわたし。今度会う時までに」
そう彼女が笑っていっていた、今オレ一人しかいないこの部屋で。
バイト代が入る日が来るまでを指折り数えて待ってた週のことだった。
せっかく二人で会うとなったのに宅飲みで、その代わりにペースは早めで、それに音楽もけっこう自棄みたいな大きめのボリュウムでかけてた。
ここの壁の薄さを気にしないで暮らす日なんかオレは、一日だってないけど、金欠病とアルコールはオレの自制心を黙らせて、音楽はオレの社会性を押し退けて、彼女の手とオレの手は同じ動きを見せてて、オレたちはただ楽しいだけなのだった。
彼女があのことをいった時、かかっていたのはチェインスモーカーズ。
あの晩から彼女と一向に連絡がつかない。もう四か月が経とうとしている。
急にきた何かの歌詞みたいな状況。オレは何も理解できないでいた。できることは何もない。最適な言葉なんか、何も見つからない。




