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花を買って歩く君と
故郷には春らしい春がないと彼は説明した。
だから花を買って、平見君と歩きたかったって感じなのかも、と彼はうつ向いて笑う。
「どーいう意図のあるシーンのためでもなく、ただ俺らの気まぐれで買われたそれはそれだけの花束なんだ、じゃあ?」
最悪の土曜日だと思ってるんだろうと彼がいうその声はむしろ踊る時のようないい方に聞こえた。
俺はこたえられない、ただ並んで歩き続けているだけ、同じ趣味サークルのメンバーってだけじゃもう済まない彼と。
俺からしたらその香りはなんだかとても遠かった。




