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 母が送ってきた手紙は全て燃やすことにしている。

 あたしはいろんな感情もものも燃やしてたけど、これは手元に来たならその日のうちに燃やす、と決めているものの最たるものが母の手紙だった。



 あたしは手早く燃やす。コートを脱ぎもせず、それをあたしは燃やす。

 手紙にかんしてはほんとに、読むとか読まないとかいう選択肢すらも存在させないってこと。



 あたしはそれを、だって燃やすべきものとして認識していたいと考えてるから。母からの手紙は燃やすべきもの。それもすぐに。差出人を確認したらもう踏みつけたりするよりさっさかと火を使える場所に歩いて行くの、あたしは本当に心の底から燃やしたい。



 世に広く知られている通り、もちろん、手紙という代物は厄介なアイテムである。後になり、読んだじぶんがいる場面をあたしも想像の中で見てみることぐらいならやる。

 おそらく、あたしが邪魔に感じているのは頭の出来がよろしくない他人や、血のつながりなどという幻想を押しつけてくる母に対してだけではない。



 ときどき、あたしは本気で、生き続けているのが意味不明なことに思え、少し笑いが出てくる。

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