母親についての説明
じぶんの母親について説明することは、簡単なことなのか困難なのか、どちらともいい難い。経験から私は思うのだが、手帳に書き殴りしているよりかは口に出していってみる必要性のほうがあることだというのはいえる気がする。なぜなら人前で、口に出していってみるときの母親についての説明は伝達のために簡略化され、そしてときに簡素な文で表すほうがよっぽど一人の女性の本質を捉えることに成功している、というのはよくあるパターンだったからだ。
そう考えていくと、いっそ私は初対面の人との会話にさえ、唐突な感じになったとしても、うちの母についての説明をしていく女性を目指していったほうがいいのかもしれない。
それは、一人の女性が老いていく様子であるとか、女性が一度きりの人生で何を残せるのかといったお決まりの内容ではない。そこでそうして若干見境をなくしつつある私が説明しようとしているのは、変わっていく私の母についてだ、変わらない私の母についてだ。私は私じしんのする近頃のじぶんの母親についての説明を聞くことにより、また何より、他人を聞き手にしてじぶんの母親の話をすることにより、ひょっとしたら新たに何か見つけ出すかもしれない。
もちろん、常に相手が同じ人間であることを忘れずに、わたしは日記帳ではありません、と彼や彼女からいわれない程度に、ほどほどに。




