ハニー
あなたはあげられる、あなたがあなたになろうと本気で考えられる夜、彼にあげたかったことがあったものなら既にもうこの世界からは失われているに違いなかったけど、それでも、とその時のあなたならそう思えるはずなのだ。
なぜってあなたの理想とは、ずっとずっと以前からあなた自身も知っていた通り、世の中の大多数の人が達成していて然るべきこと、優しくしてあげたいと感じる唯一の存在にだけ優しくしている、当たり前にそれができている、じぶん自身になるという、ありふれてはいても尊い、ときにそれは残酷なおとぎ話みたいにも見えるぐらいに尊い、そのことだったわけだから。
あなた自身が考える、あなたらしくないと思うあなた。似合う夜なんていつまでもきっと来ない、とあなたが考える、色んな言葉としぐさ。
そして、今夜のあなただったらそれらをちゃんと彼にあげられる、本当のあなた、あなたがやっとあなた自身になるというそのこと、今夜のあなたにだってそれが難しいことだなんて、オレには到底思えない、そんなことは信じない。間違ってもそれは今夜じゃない、とあなたが小さく呟くんだとしても、全然。




