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靴跡
床の上に泥のついた靴跡。
乾き具合から見て七、八分前までここにいた。ここで歩き回っていた。
土足で僕のいない間に部屋に上がり、空っぽな僕の人生をなめ回すように眺めて、そしてまた出ていった人。
着替えもしないで昨日買っておいた林檎を手に持つ。
ベッドの端に腰を下ろす。丸のままのそいつを囓る。
これが心臓なら、と思うけれど、叩きつけるものとして見たら林檎は対象外だ。ここ、僕の人生においては対象外だ。
それでも今、何かとても投げたい。
投げだしたいものばかり、この人生は僕の心に寄越す。




