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惑乱






 散文詩人の父と人生の半分を森で過ごす母が、わたしたちの両親。

 それにわたしから全てを奪っていくことにしている兄、盲目の妹という世界中に存在する定番のレッテル張りから逃れられなかった少女であるわたしと、ずっとこの四人での井戸のある古い家での暮らし。

 わたしは父のことを狂気として扱ったけど、兄は父に首輪をつけては引き千切られ、そのたびに困ったような微笑みを家のなかに漂わせていながらも実際には逆。

 わたしはいつまでも、裏手の母がいるはずの暗い森を泣きながらさ迷うことしかできない幼子。

 わたしが泣いているといつも兄が来た、兄のやり方は残酷だった、世界で兄だけが頼りにしていいひとなのだと、わたしに信じこませたそのやり口。

 わたしたち兄妹は、あのふたりにとって作品でしかなかった、ずるいと思われながら。いつしか、両親は作者であることの重さを忘れ、作品の身軽さにこそ何かを見出した、あなたたちはずるいといっている彼女たちの目。

 いつも、黒い森の黒い服を着ていた母。

 わたしは息を止めていた、家のなかにいる母のために。

 だけど頭のなかでは常に大騒ぎで、それだから取り繕って、へりくだって、絞り滓の笑顔を浮かべて、それでも、それでも、それでも尚家にいたかったわたし。












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