LP
俺と君はラジオはつけない、異国でならそうするかもしれない。でもここは日本、歓喜のサウンドには縁遠い国。だから俺と君は、頭の中で流れる同じ曲に合わせて踊る。だから俺と君は、真夜中のキッチンで二人で踊る。ラジオなんかいらない、本当にたくさんの連中と俺たちは距離を保ちたいと願ってる。異国でならラジオもいいものかも、でもここは日本。他の部屋は暗く、ここでだけ点けられている二人のための明かり。俺と君で、キッチンで二人で踊る。他にどこにも行き先はもってないんだ、君の髪の中に指を入れていると他にもう行くところはない。そう思うんだ。
わたしたち二人の当てっこ遊び。片方が今何の曲を頭の中で再生させているのかを当てるゲーム。あなたが口パクを逸脱したりする、わたしは声を上げて笑う。公開初日とか次の日ぐらいのたまたま観た、でも素晴らしい新作映画から出てきたばかりの若い二人みたいに。エネルギーに充ち溢れてるの、ラジオなんか必要ない。時刻も曜日も見当はつけられないって感じでいてください、今晩。世界の片隅。明るいキッチン。この人生で最も明るくみえる場所なの、わたしがいてあなたがいる今、ここは。




