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不死の唇
かなり年齢差がある弟がオレに耳打ちする。
「あのくちにもおはかつくってあげたい、にいちゃん」
綺麗に片付けられたテーブルの上には、アイフォーンも読みものも花もない。
そこで彼女はいつからかずっと頬杖をついている。
彼女は遠かった。そこまでは遠すぎた。
オレら兄弟の母親であるその人は、昔ながらの呪われし者たちの一人でもある。黒い服をもう着てなくても、一歩も離れてたりはしてないんだと、すぐにわかる。
あんなものが、不死の唇が、まだ小さな弟にもみえていると知ってオレは、初めて胸が痛い。




