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こいものがたり
(終) 閉ざされた。すべてそのままにして彼女は部屋を出て行く、溜息一つもつかず。彼女はいつもの使い方をしたくなくなった、そう思いつくともう。この男を前にして何か一つでもじぶんを見せる価値。ラケットを振りかぶる。彼女の待ち望んでいたものだった、この瞬間は。暗転。なぜかそう見ることに決めていた彼にとっての旨味も。そして約二十秒前その手が机に載せたゴディバの箱も落ちる、まず男の細い手。スパッ。しつこい物語、なぜか彼女との全ては濃いものになると信じていた男の、ここまでが。




