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持ち運んでいる






「その時でした、父はぼくの頭を撫でてくれました。初めてでした。そうしたのはたまたまのこと、子どものぼくにいなくなってくれないかなと、そんな思いから手を伸ばし、置いた、だから本意ではなかったんだと思います。一人になりたいなあって、どこか行ってくんないかなってそんな思いで、ぼくの頭ということになる位置に、置かれた手ということになる、って、それは考えているべきで、けれど、その手の大きさを、父の感情とは切り離されていたとはいえ、確かに手は動いてた、撫でていることになってた、その瞬間の記憶を、ぼくはずっと持ち運んでいるんじゃないでしょうか」



 じぶんがいた教室で、現在でも記憶しているあらゆる言葉、色とりどりの声、不可解極まりなかった他人の洞察。

 この人生は、死なないでいるだけだというそれだけのものだった、そうはいっても、どの角度から見ても大人の姿で、自身を朝の鏡に映しながら、今なら分かると、俺が一人呟くことぐらいは起きる。作文も、君も、とっくに失われている、多くが失われ続けている世界の中で俺がまだいて、時おり何かが見えているということ。












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