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悲観論者
僕はなんでもいいから。何もかもに対してそれしか常に答えないし応えない、でもきっとよそのテーブルから見た印象では柔和な優秀作にちがいない男。
私は無言で、男がこちらに渡してきたメニュー表に火をつけ、燃やしてみせてあげた。
するとその男の美しい顔は、いきなり照らされたためではなく、不思議に明るい表情になっていく。
「あぁそうか、そうしていたら良かったんだろうな。まるで初めて見るみたいな赤い色が、こんなにも、こんなにも」
男はおそらく誰に向けるでもなく、一人ごとの調子で、そう呟いていたのだが、でも遠ざかっていきながら私は、じぶんの聞きたいことを最後に聞いていたのかもしれないと、今ではそうも思うのだ。




