しけった話

宴

　一人の男が狂った。それを目にして女も狂った、演技ではなく彼女自身の望みでそれはそうなった。彼らの子は少しずつ狂っていくことになった。それらを目にして彼らの孫娘であった彼女も狂った。それらを目にして彼も狂った、狂った彼のあのわらい声のせいで、ペットだったオウムだかインコだかも狂った。恋人たちはいつでも順調に、少しずつ、狂っていく。それらを目にして狂わなかったその町でのぼくはちっぽけな存在だった、この街にいるぼくは狂いそうになりながらもここにとどまっている。