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死角






 私たちの理想の男子は何をいったとしても頷いてくれる人だ。

 私たちの考えつくようなことは、全部何でも聞いてくれて、口約束ででも、お願いしたことを叶えてくれる。それに私たちの考えが間違いだとしても、頷きつつ最後まで聞いてくれて、それからちゃんと後々困ることにならないよう指摘もしてくれて、ただし絶対、絶対に大きな声は出さない。外部に伝わらないように考えてくれる。いつも私たちのことを考えてくれる。

 もしかすると、縛りつけられた男の子が理想だと私たちはいいたいのかもしれない。彼はどこにも行けず、行きたいと思っているのかどうかじぶんでも疑わしくなっている、そういうふうであってほしいと、少なくとも、ふとした瞬間に望むような私たちかもしれない。

 ずっと手の届く場所にいてくれればいい。

 それって実はいうまでもなく簡単なのか、でも私たちの知る大人連中がことごとく下を向いている時間が多くなっていったことや、子どもの側に寄ることさえしなかったことを鑑みれば、これは望むこと自体間違いな望みかもしれない。

 瞬間を生きる力、瞬間を染めあげる感受性が、私たちにはなかった。私たちの声だけでは、何かが足りない。









 私たちが男子であったほうが、きっと話も早いだろう。私たちの理想的な男の子は無理をいっても大丈夫だった。

 それどころかこちらの予測を越える包容力を見せた。なぜなら、私たちの理想は高いのだけど、同時に惨めになるほどに低いともいえるから。

 私たちの理想とするのは、話を聞いてくれて、理解してくれて、共感を示してくれて、反対意見もくれて、つまりは突き飛ばすためではなく側にいてくれる、ということで、これは技術の問題でもありそうだ、私たちが男性アイドルグループを画面ごしに観ていて、彼らは常にこちらに見せているように実際仲良しグループなのかどうか見抜けない時が多々ある、それと同じ。一定のラインを越えた時点で、本当か嘘かは抜きにして、男の子のその努力に私たちは笑顔で敗北を宣言する。



 あまりに空腹すぎて私たちを転がすのは簡単だと、理想上の男の子たちは思っている。

 私たちの気持ちは、だっていつも私たちの理想からずれたところで揺れる。









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