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自由をこの手に
僕はどうしようもなく怯えている。どこかの町の一軒家、二階にある部屋の片隅で僕は震えてる。これを止められなくなってしまっている、こちらに悪さを働こうとするものたちに追われている、弱者が選択するこれはポーズに違いない、というような状態を僕は続けている。
荒い鼻息。両の手で、口をぎゅっと押さえつけているせい。
しかし奇妙なことに先ほどから僕は視界の端で、椅子の座面から今にも落下しそうな載せ方のタブレットのほうを確認してばかりいた。
僕はここから、この壁際から動くわけにはいかない。一歩も。とにかくもう一歩も移動することをじぶんに許すことは僕にはできない。
世界は静まりかえっている、ずっと。
僕は待ってなんていない。
待ってなんてないのに、でもたぶん、僕はずっとここで待っていたようにしか彼女には見えないのに違いないのだった。




