しけった話

時計合わせ

　いやいや、と私は応戦する。

　私が男性から、まるで鎧を纏ったかのように生きている冷たい女だという意味のコメントを頂くのはこれが初めてじゃない。

「私だって笑う、私だって例えば、部屋で一人のあなたが真顔で正座して、コーヒーの入ったマグカップを明かりの下に置いて、覗きこみながら鼻毛を抜いている、みたいな場面に遭遇したら微笑むよ私だって？」

「それ、せめてスマホのカメラじゃだめだった？　そして微妙に笑顔が小っちゃい。思っくそ笑ってくれよ。俺がかわいそうだろ」