リトル
ある悲しい夜に、僕は口を大きく開けさせられた。
開くようにいわれたから、大人しくいうことを聞くよう強制されそうするのが常だったから。
僕は、すごくかんたんに開いた。
どっちを向いても暴力が溢れている世界だから、僕はうずくまった。すると何かが落とされる。
何か良くないものが僕の中に落とされて僕のじっと見ている暗闇がそのせいで怖くなっていき僕ははっと気づくと今やどんどん落とされ続けているのだった、そこでの僕は虫以下の存在、ごみ溜めだ、いつの時点でかじぶんがちゃんとサインもして役を引き受けているということにもなっている。
ぜんぜん覚えがない、しかし僕はそれすらいえない、コトリと僕の中で何かが動きそうになり寸前に事実が突きつけらる、どんどん落とされ続けているそのさなか僕は見る、目その他穴という穴から僕は僕をこぼしているさなかにもどんどん小さくなる僕は見る、じぶんの名前が書かれた紙を見直後それもなかに突込まれ、そうして僕はあああああああああああああああ、といった。あが、ああああ。
聞こえないよう、聞くまいとした。僕はじぶんを必死に守ろうとしている僕を確かに目にした。
初めて望みを持つようになるのはその時だ。
自力であったり他者の協力があったりで、確かな移動というものが現実に可能なのなら、きっと嬉しくなるべきだと思う。
僕が思い描けるのは長距離バスに乗ることだ。
でも、僕はただバス停に立ち尽くしている。光がよって来ても、下を向いている。
運賃がなかった。
僕の名前はリトル。いまだに僕は、僕の始まる時の匂いを知らないでいる。




