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ここで一人泣きたい気持ちになっているなんてばかみたい
すっかり見慣れた彼の寝顔。深い眠りの中にいる彼の。
でも、今だけはわたしのもの、なんていうことはできない。わかっているから。部屋から出れば、わたしは傷つけられる。
唇なんて、どれも仕事できなくなればいいのに。
わたしは彼の動かない唇をじっと見つめている、わたしは見つめすぎている。
いつの日か、彼が後悔するぐらいなら、明日なんて来なければいいのにと思っていた瞬間がいくつもありすぎたし、この先もいっこうに消えないままの不安がある。
わかっていた。このわたしの性質が、恋愛のある面を暗く重たいものにさせていた。
別の面では輝くようなものではあっても、手の中でクルクル回しているだけでももうわかってしまう。
悪いのはわたしなんだと。ノイズを生む原因。今だって。
ただ、眠る人に見惚れていればいい。
穏やかなこの時間に思うさま浸ればいい。
でもできない。わたしには。




